「つぶやきの奥にあるものがたり」Stories Behind the Whispers

かつての私は、新宿駅のホームで来ない父を待ち続ける少年でした。
あるいは、母親の後を追いかけて裸足で外へ飛び出す泣き虫な子どもでした。
当時はただ寂しくて、悲しくて、その出来事の意味など考えることもありませんでした。
けれど人生を重ねるなかで、私は何度も過去を振り返るようになりました。
なぜあの日のことを、今も覚えているのだろう。
なぜあの出来事は、心に残り続けているのだろう。
記憶とは、不思議なものです。

忘れていたと思っていた出来事が、ある日突然よみがえり、今の自分を照らし出すことがあります。この連載は、そんな記憶の断片をたどりながら、自分自身の物語を見つめ直していく試みです。過去を懐かしむためではなく、今の自分を知るために。
そして、これからの人生を生きていくために。

