路地の突き当たりの家だった。
その路地には、
つつじが咲いていた。
春になると、
濃いピンクの花が、
壁のように連なっていたのを覚えている。
ある日、外に出ると、
そのつつじのまわりに
子どもたちが集まっていた。
年上の女の子が、
「これ、おいしいよ」と言った。
差し出された花を、
そっと口に含む。
甘かった。
花の奥に、
小さな蜜があった。
あれが、
自然のものを口にした
最初の記憶かもしれない。
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断崖の記憶は、
怖さとともに残っている。
けれど、
この甘さの記憶は、
やわらかく、
いまも消えない。
つつじのピンク色。
花びらの手触り。
蜜の甘さ。
そして、
「これ、おいしいよ」と
教えてくれたやさしさ。
甘さは、
味だけではなかった。
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人は、
怖さも覚えているけれど、
やさしさや甘さも覚えている。
どちらも、
僕のはじまりの景色。
いま、
僕の心には、
どんな甘さが残っているだろう。
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怖さと、
やさしさと、
甘さ。
僕の最初の世界は、
その三つでできていたのかもしれない。
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第2回 心に残る、あまさとやさしさ

















