Memories of the Inner Journey

第8回 座れない

海

幼稚園の頃、父と母と3人で、海に行った。
夏の暑い日だった。
海が初めてだったのかもしれない。
波打ち際に立たされて、波が引くときに足の裏の砂がなくなっていくのが怖かった。
僕は、砂に埋められた。
砂はとても重たかった。
あんなにさらさらしているのに、身動き一つできなかった。

座れない

父が、砂浜で寝そべって眠り始めた。
母が言った。
「写真を撮るから、背中に座って」

えっ?

僕は
自分から父に触ったことがなかった。
おずおずと近づく。
起こさないように、そっと。

そして
勇気を振り絞って
父の背中に座った……
ふりをした。

その写真が、今でも残っている。

座れない

気まずそうに、笑い顔が中途半端な僕。
怖かったのかな
起こしたら怒られるかと思ったのかな
どしんと座っちゃえばよかったのになぁ。

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