Memories of the Inner Journey

第5回 笑顔は世界をしあわせにする

つぶやきの奥にあるものがたり

母には、妹芸者がいた。
たまちゃん、と呼ばれていた。
幼い僕と、
よく遊んでくれた人だ。

若いころの母は、
静かな人だった。
そして、美人だった。

けれど、
たまちゃんは、
元気で、明るくて、
よく笑う人だった。

たった二、三歳のころの
僕の初恋だったのかもしれない。


お祭りの衣装をまとった
たまちゃんの写真が、
いまも残っている。

その笑顔は、
いま見ても、
やっぱり素敵だ。

笑顔は世界をしあわせにする


人の笑顔が好きだ。
笑い声も好きだ。

場の空気が、
ふっとやわらぐ瞬間が好きだ。

もしかしたら、
僕の心のどこかに、
いまも
たまちゃんがいるからなのかもしれない。


断崖の怖さも、
つつじの甘さも、
白檀のにおいも、
ぬかるみの冷たさも。

そして、
たまちゃんの笑顔も。

僕のはじまりは、
いくつもの感覚と、
いくつもの人でできている。

笑顔は、
世界をしあわせにする。

あのころの僕は、
きっと
それを知っていた。


関連記事一覧

  1. つぶやきの奥にあるものがたり
  2. つぶやきの奥にあるものがたり
  3. 海
  4. つぶやきの奥にあるものがたり
  5. 心に残る、あまさとやさしさ
  6. つぶやきの奥にあるものがたり
PAGE TOP