母には、妹芸者がいた。
たまちゃん、と呼ばれていた。
幼い僕と、
よく遊んでくれた人だ。
若いころの母は、
静かな人だった。
そして、美人だった。
けれど、
たまちゃんは、
元気で、明るくて、
よく笑う人だった。
たった二、三歳のころの
僕の初恋だったのかもしれない。
お祭りの衣装をまとった
たまちゃんの写真が、
いまも残っている。
その笑顔は、
いま見ても、
やっぱり素敵だ。

人の笑顔が好きだ。
笑い声も好きだ。
場の空気が、
ふっとやわらぐ瞬間が好きだ。
もしかしたら、
僕の心のどこかに、
いまも
たまちゃんがいるからなのかもしれない。
断崖の怖さも、
つつじの甘さも、
白檀のにおいも、
ぬかるみの冷たさも。
そして、
たまちゃんの笑顔も。
僕のはじまりは、
いくつもの感覚と、
いくつもの人でできている。
笑顔は、
世界をしあわせにする。
あのころの僕は、
きっと
それを知っていた。
















