Memories of the Inner Journey

第6回 父との旅行

つぶやきの奥にあるものがたり

小学校の高学年の頃だったと思う。
父親が「一緒に旅行に行こう」といった。
それも僕と二人だけで。
父親のことが怖かったし、あまり話したこともない。
でも、あこがれもあったから、うれしかった。
待ち合わせは、新宿の中央線。
指定された電車に乗って待つように言われた。
母親経由で、指定席の切符ももらっていた。
確か、朝早い時間だった。
ワクワクドキドキしていたのを今でも覚えている。
電車が来て、乗り込んで。
父親はまだ来ていなかった。
待てど暮らせど来なかった。
出発の時間がどんどん迫ってくる。
心配になって、ホームに出て階段下の改札口(当時はホームに上がる階段下に別の改札口があった)まで行って、駅員さんに、この電車で間違いないかどうか聞いた。
間違いなかった。
でも、父は来ない。
発車のベルが鳴った。
ホームに降りたまま、僕は電車を見送った。
もしかしたら、別の車両に乗っていたのかもしれない。
時間を間違えたのかもしれない。
駅員さんに事情を話したら、次の電車かもしれないからと、切符を変えてくれた。
30分ぐらい待って、次の電車になって待った。
でも、父は来なかった。
僕は悲しくて、悔しくて、大急ぎで家に帰った。
母親がびっくりして「どうしたの?」と聞いた。
僕は、「おとうさんは来なかったんだ!」と、布団に顔を押し付けて大きな声で泣いた。
しばらくして電話が鳴った。
母が出て話をしている。
どうやら、父は
八王子の駅で待っていたらしい。
そういう約束になっていたのだという。
僕の心には、
悔しさと、怒りと、後悔と、
そして、父への申し訳なさが
ぐちゃぐちゃになって渦巻いた。
そしてまた、泣いた。

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